


前回は、政策金利の仕組みについて学びました。今回は、政策金利を上げると何が起こるのか、その実際の効果について考えていきます。
2024年あたりから、政策金利が引き上げられ、無担保コール翌日物金利も上昇しています。金利の上昇は、お金を貸す側にとっては喜ばしいことですが、借りる側にとっては、返済額が増え、負担が大きくなります。
なぜ、日銀は政策金利を上げるのでしょうか。
その主な目的として、ここでは2つ紹介します。
日本では、2021年からじわじわと物価があがるインフレが起きています。
インフレには大きく2種類あります。
•ディマンドプル型インフレ
景気が良くなり、
みんながたくさん買うことで
物価が上がるタイプ
・コストプッシュ型インフレ
原材料や輸入品の値段が上がり、
企業が価格を上げざるを得ないタイプ
どちらのインフレでも、放置すると生活が苦しくなる人が増えます。
そこで日銀は、政策金利を引き上げることで次のような効果を狙います。
•ディマンドプル型
景気の“熱”を少し冷まして、
物価の上昇をゆるやかにする
•コストプッシュ型
円安を抑え、輸入品の値上がりを防ぐ
円安が進むと、輸入に円がたくさん必要になり、輸入品の価格が上がります。
金利を上げると円が買われやすくなり、円安の進行を抑える効果が期待できます。
ただし、コストプッシュ型インフレのときは、金利を上げすぎると景気が冷え込みやすいため、慎重な判断が必要です。
日本円は(2026年6月現在)1ドル160円前後という歴史的な円安水準にあります。
政府が為替介入を行った(ドルを売って円を買う)という報道もあるほどです。
円安の大きな原因の1つが、日本とアメリカの金利差です。
コチラのコラムでも学んだ通り、金利が高い通貨ほど、投資家にとっては魅力的で買われる傾向にあります。(通貨高が進む)
そのため、
•日本の金利が低い
•アメリカの金利が高い
という状況では、円が売られ、ドルが買われやすくなります。
政策金利を引き上げることで、
金利上昇
→ 円を持つメリットが増える
→ 円が買われやすくなる
→ 円高方向に働く
という流れが期待できます。
ただし、アメリカ経済が非常に強い状況では、金利差だけで為替が動くとは限らず、効果が限定的になる可能性もあります。
政策金利の引き上げには、デメリットもあります。
こちらについても2つ紹介します。
スタグフレーションとは、
物価が上がっているのに
景気が悪くなる最悪の状態
現在の日本のインフレは、
•輸入価格の上昇(コストプッシュ)
•失業率の低さ(ディマンドプルの要素)
が混ざった“複合型”
とも言われています。
この状況で金利を上げすぎると、
•物価は下がらない
•でも景気は冷える
というスタグフレーションに陥る危険があります。
実際、日本は1990年代のバブル崩壊前に金利引き上げのタイミングを誤り、その後の長いデフレにつながったとも言われています。
バブル崩壊後のデフレ要因については諸説あります
それほど、金利を上げる判断は難しいのです。
長いデフレ時代では、変動金利の方が有利なことが多く、多くの人が変動金利を選んでいました。
しかし、インフレ時代に入り金利が上がると、
•毎月の返済額が増える
•借入額ギリギリで組んだ人ほど負担が重くなる
•最悪の場合、住宅を手放さざるを得ないケースも出る
といった問題が起きます。
今は家を買う予定がなくても、将来の自分に関わる話として知っておくことが大切です。
もしあなたが高校生で、奨学金制度の利用を考えているなら、固定金利か選択金利かを、選択することがあるかもしれません。
奨学金制度は、申し込み時は自分の借金であるという自覚がうすいものです。
返済が義務づけられるのは社会に出てからですからね。
しかし、返済義務を負うのはあなた自身。
身近な人と相談をしたうえで、少なくとも奨学金制度の仕組みを理解したうえで利用するようにしましょう。
・日銀は、インフレ抑制や円安抑制などの目的のために政策金利を引き上げる
・政策金利の引き上げは、景気の冷え込みや家計の負担増といったデメリットもある
・金利上昇のメリットデメリットを見極めながらの慎重な判断が求められる
全4回のシリーズを通して、政策金利の仕組みと、その影響の広がりを学んできました。 ここまで読んでみて、こう思った人もいるかもしれません。
「こんなに複雑なら、知識を身につけても意味があるのかな」
実は、金融の世界は“教科書どおりに動かないこと”の方が多いです。
金利を上げても円高にならないことがあるし、金利を上げても株価が下がらないこともあります。さまざまな要因が同時に動き、予想外の結果になることも珍しくありません。
それでも――
知識を身につけることには、確かな価値があります。
なぜなら、知識があると
•何が起きているのかを自分で判断できる
•ニュースの言葉に振り回されなくなる
•将来の資産形成で“選べる立場”になれる
からです。
金融市場は思い通りには動きません。
でも、知識を持っている人だけが、変化の中で自分を守り、チャンスをつかむことができます。
まずは知ること。
そして、一度立ち止まって考えてみること。
この積み重ねが、これからの時代を生きるあなたの大きな力になります。