


皆さんは認知症対策といって何を思い浮かべますか?
「適度な運動で予防すること?」
「早期発見のための健診?」
もちろんそれも大切ですが、認知症対策と一言で言っても、どの“リスク”に備えるかによって必要な対策は大きく変わります。
今回は、行政書士・FPの視点から、目的別に考える認知症対策をわかりやすく整理します。
相続が発生すると、相続人全員で「遺産分割協議」を行い、その結果を遺産分割協議書にまとめます。
この書類がないと、
•預金の払戻し
•不動産の名義変更(所有権移転登記)
ができません。
しかし、認知症になると、この協議書に署名・実印押印ができなくなります。理由は、意思決定能力が低下すると、法的に有効な意思表示と認められないためです。
そのため、相続人の中に認知症の方がいる場合は、家庭裁判所で法定成年後見人を選任する必要があります。
•申立て
•家庭裁判所とのやり取り
•後見人選任
と手続きが続き、数ヶ月単位で時間がかかることも珍しくありません。
さらに、現行制度では一度後見人がつくと、認知症が治るか亡くなるまで後見が続き、月々の報酬が発生します。
成年後見制度は現在見直しが進んでいます。最新情報をご確認ください。
任意後見制度もありますが、これは発症前に契約しておく必要があり、万能ではありません。
任意後見制度とは、
判断能力があるうちに信頼できる人を後見人として契約しておく制度です。
認知症などで判断能力が低下した後に、契約内容に基づいて後見が開始されます。
本人の意思を尊重しながら、財産管理や生活支援を行える点が特徴です。
最も確実なのは遺言書を作成しておくことです。 遺言書があれば遺産分割協議が不要になり、認知症による意思決定リスクを回避できます。
ただし、遺言書に書き漏れた財産は別途協議が必要になるため、網羅性の高い遺言書作成が重要です。
認知症になると、 「このお金を引き出したい」という意思表示が有効と認められなくなり、口座が凍結される可能性が高くなります。
これは家族であっても引き出せません。 老後の蓄えがあっても、認知症になると施設入所費用すら引き出せないというケースが実際に起きています。
最近は「代理人カード」を発行する金融機関もありますが、 認知症が判明した時点で利用停止になるケースがほとんどで、根本的な対策にはなりません。
代理人カードは“発症前の生活支援”としては便利です
信頼できる人にお金を渡して管理してもらう方法。
ただし、
•所有権が完全に移る
•世話をしなくても法的に強制できない
•贈与税の問題
などがあり、認知症対策としては不安定です。
負担付き贈与(「お金をあげるから世話をしてね」)もありますが、違反時は契約解除しか手段がなく、目的達成が難しいです。さらに、贈与を受けた方が先に亡くなった場合、事態が複雑になり、当初の目的(贈与した人の生計の維持)を達成することが難しくなります。.png)
認知症発症後に後見人が口座管理を行えます。
ただし、後見監督人が必ずつき、月々の報酬が発生します。
信頼できる家族に財産管理を託す方法。
生前贈与と違い、
•契約違反時は託す相手の変更が可能
(契約書内容による)
•財産は信託財産として管理される
(勝手な使い込みは違法)
•認知症後もスムーズに管理が継続
というメリットがあります。
一方で、家族信託は歴史が浅く、まだまだ整備が必要な分野でもあります。そのため、高度な専門知識が必要となり、契約書作成報酬が(遺言書・遺産分割協議書)よりも高い傾向にあります
施設入所のために自宅を売却して資金を確保したい、という方は多いです。 しかし、認知症になると売買契約ができなくなり、自宅を売ることができません。
・契約違反時は解除しかない
(解除した後は誰が売ってくれるの⁉)
・贈与税がかかる
というデメリットがあります。
後見人が売却手続きを行うことは可能ですが、 後見監督人の使命は「財産の維持」。
自宅売却は財産減少と判断され、認められないケースもあります。
信託契約で「必要に応じて売却できる」と定めておけば、認知症発症後でも託した相手が売却できます。
契約は、認知症発症前にしておく必要があります
さらに、
•自分の死後は後妻が住む
•後妻の死後は先妻の子に相続させる
といった複雑な承継設計(いわゆる“二次相続の指定”)も可能で、遺言書では実現できない柔軟性があります。

認知症対策は「何を守りたいか」で選ぶべき制度が変わります。
不安や疑問がある場合は、行政書士・税理士(税務)、司法書士(登記)など、専門家に早めに相談することをおすすめします。
認知症発症後では、できる対策はほとんど残されていません。
特に家族信託は、各機関との連携が必要なので、契約書の作成に時間がかかります。
発症前の元気なうちに対策をとることが必要です。