


今回は序章として、外国為替を理解するための土台となる『お金の価値』について考えていきましょう。
序章 お金の価値とは
その1 外国為替とは何か
その2 外国為替レートはどう決まるのか
その3 私たちの生活にどのように影響するのか
タイトルは少し難しそうですが、内容はシンプルです。
『お金がなかった時代』に思いを馳せながら、今の通貨がどんな役割を果たしているのかを考えてみてください。
年号はあえて出しません。地域によって歴史は異なりますし、ここでは“お金がどのように進化してきたのか“を大まかにたどることが目的です。
人は便利さを求める生き物です。
そのため、過去の仕組みには必ずデメリットがあり、そのデメリットを解消する形で次の仕組みが生まれてきました。
では、順番に見ていきましょう。
服と魚を例にすると、デメリットがよく見えてきます。
(ここに登場する名前は架空の人物です。)
・魚を釣るのが得意な 釣山さん
・服を作るのが得意な 縫川さん
釣山さんは大量の魚を釣り、村人と物々交換しようとしますが、
「こんなにたくさん魚はいらない。すぐに腐ってしまう」と断られてしまいます。
縫川さんは刺繍に1週間かけた服を作りましたが、村人が差し出す交換品に納得できません。
「こんなに手間をかけたのに、これじゃつりあわない」と感じるのです。
デメリット、見えましたか?
・魚のように腐るものは保存がきかない
・服のように価値の感じ方が人によって違う
改善点
・保存のきく共通の道具が必要
・誰から見ても同じ価値を持つものが必要
そこで登場したのが、カウリーシェルなどの貝殻を使ったお金『貝貨』です。
・腐らない
・美しく、希少性がある
・装飾品としても価値があった
こうした理由から、貝殻は“価値の象徴”として広く使われました。
漢字にも“貝”が入るものが多く、
買・財・貢・賀・賛・賢などは、価値や尊さを表す言葉です。
しかし、貝殻にもデメリットがありました。
デメリット
・自然のものなので、入手量をコントロールできない
・海沿いと内陸で価値が大きく違う
・経済が発展すると、大量の貝を運ぶのが大変
改善点
・自然に左右されない、安定した供給
・持ち運びしやすい
そこで登場したのが金属貨幣です。
貝殻と同じ自然物ですが、決定的な違いがあります。
金属は採掘に大きな労力が必要で、供給量が急に増えにくいのです。
そのため、価値が安定しやすく、貨幣として優れていました。
ただし、金属には次の問題が残ります。
デメリット
・重くて持ち運びにくい
改善点
・軽くて持ち運びしやすい仕組み
金属貨幣の代わりに、
「金属を預けた証明書(預かり証)」が使われるようになります。
・重い金属を持ち歩かなくてよい
・預かり証を持っていれば、いつでも金属と交換できる
これが紙幣の始まりです。
しかし、ここにも問題があります。
デメリット
・商人が発行しているため、本当に信用してよいのか不安
改善点
・もっと信用できる存在が、証明書を発行する必要がある
人々は次第に、
「預かり証そのものに価値がある」と考えるようになります。
しかし、発行元がバラバラだと信用に差が出ます。
そこで国が制度として紙幣を発行し、
「この紙幣は必ず金と交換できます」
と保証する仕組みが生まれました。
これが金本位制です。
デメリット
・保有している金の量以上に紙幣を発行できない
改善点
・経済規模が大きくなっても対応できる仕組み
経済規模が大きくなると、必要なお金の量も増えます。
金本位制では対応できなくなり、各国は制度を変更しました。
現代のお金は、
「この紙には1万円の価値があります」
と国が保証することで価値が成り立っています。
つまり、1万円札は
“渋沢栄一が描かれた紙きれ”ではなく、国のお墨付きによって価値が保たれているということです。
貝貨や金属貨幣のように、それ自体に価値があるお金もあれば、
預かり証や金本位制のように、価値あるものと結びつくことで価値を持つお金もありました。
でも、現代のお金はどうでしょうか。
先ほども触れたように、お札やコインそのものには、実質的な価値はありません。
特別な素材で作られているわけでもなく、紙や金属としての価値はごくわずかです。
では、なぜ1万円札は1万円として使えるのでしょうか。
それは、
国が「この紙には1万円の価値があります」と保証しているから
です。
つまり、現代のお金の価値は
国の信用(国のお墨付き)によって支えられています。
通貨の価値は何で決まるのか
国が保証しているとはいえ、
「通貨の価値=その国の信用度」という単純な話ではありません。
・経済の強さ
・金利
・物価
・貿易
・投資の動き
・国際情勢
こうしたさまざまな要素が複雑に絡み合って、
通貨の価値は日々変動しています。
だからこそ、
『通貨の価値が低い=その国が信用できない』
というわけではありません。
通貨の価値は、もっと多面的で、動き続けるものなのです。
・お金の価値は、最初は実物の価値(貝・金属)から始まり、
・次に価値あるものと交換できる仕組み(預かり証・金本位制)へ進み、
・現代では国の信用によって価値が支えられている。
お金の歴史をたどると、
『価値とは何か』という問いの答えが、時代とともに変化してきたことが分かります。
現在、通貨も新しい形が考え出され、導入されている現場もあります。
ステーブルコインがその例です。新しい『お金』が出てきたら、既存の『お金』のデメリットや新しい通貨の価値は何によって支えられているのか、このあたりを考えてみると、理解につながるかもしれません。
今回は『お金』という広い枠で、価値の成り立ちを見てきました。
次回からは、いよいよ 国や地域で使われる『通貨』同士の関係、
つまり 外国為替 の世界に入っていきます。