複利の罠

複利の罠

『単利と複利』のコラムで、最後に投げかけた”複利のデメリット”について、考えていきましょう。

複利の罠

「長期投資は複利効果が絶大!」
投資信託を勧められるとき、よく耳にするセールストークです。


たしかに複利は掛け算の世界
足し算で増える単利よりも、うまくいけば一気に資産が増えていきます。 コチラのコラムでも、複利の“伸びる力”を学びました。
では── このセールストークに、安易に乗っかっても良いのでしょうか?


今回のコラムでは、複利の“光”ではなく“影”に注目します。
題して 「複利の罠」。
複利のデメリットを、ゲームを使って体感していきましょう。



コイン当てゲームで考える複利の罠

ゲームを通して、複利の罠について考えてみましょう。


コインを投げて「表」か「裏」かを当てるだけの、シンプルなゲームです。
コインは全部で10回投げ、その都度予想します。
ゲーム開始時の持ち点は100点。


AかBどちらかのゲームを選択し、予想が正解か不正解かで持ち点に加点・減点されていきます。


■ ゲームA(単利)
・正解:+10点
・不正解:−10点


■ ゲームB(複利)
・正解:持ち点 × 1.1
・不正解:持ち点 × 0.9

例)1回目 不正解 100点×0.9=90点
  2回目 正解  90点×1.1=99点
   ・
   ・
   ・


どちらも10回終わったあとに
・150点を超えていたら豪華景品
・100点を下回っていたら罰ゲーム というルールです。


さあ、あなたなら AとBどちらを選びますか。





結果を比べてみよう

下のグラフは、勝ちの回数を横軸、最終点数を縦軸にとったものです。


水色 :ゲームA
オレンジ:ゲームB


紫の横線が罰ゲームのライン、
緑の横線は景品ラインです。
このグラフを見て、あなたはどう感じるでしょうか?



このグラフから見える“複利の罠”

① 勝ち続ければ複利は圧倒的に強い

10勝0敗なら、複利は259点。 単利の200点を大きく上回ります。


景品をもらえるラインが200点なら、単利より複利の方がもらえる確率は高くなりそうです。
(罰ゲームは考慮せずに)


② でも「よくある結果」では複利が負ける

5勝5敗(勝率50%)だと
・単利:100点
・複利:95点
複利の方は最初の持ち点100点よりも減っています。


勝ちと負けが半分ずつだと、複利はじわじわ減ってしまう。
つまり、複利は強力な味方にもなるけれど、使い方を間違えると静かに資産を削る“罠”にもなるのです。


実際の投資でも同じことが起きる

下のグラフを見てください。
1月に100万円を投資し、毎月の値動きを仮定して作成したものです。



結果は・・・
──1年後に100万円が74万円に減っています。
思わず二度見してしまう数字ですよね。


でもよく見ると、プラスとマイナスの合計はどちらも110%で同じ
さらに、1月〜8月だけを見ると、多少の上下はあっても右肩上がりに見えます。


この部分だけを切り取って見せられたら、 「この商品、儲かりそう!」と思ってしまうのも無理はありません。


複利の光と影をどう見るか

投資信託のパンフレットには、 「複利で雪だるま式に増える!」 という、明るい未来が描かれていることがよくあります。


たしかに複利にはすごい力があります。
うまくいけば、時間がたつほどお金がどんどん増えていく
── そんなイメージを持つのも自然です。


でも、現実の投資はコイン当てゲームと同じで、 勝つ年もあれば、負ける年もある
そして、負けたときに強く効いてくるのが、 今回見た 複利の減るときの勢い です。
複利は、増えるときも早いけれど、 減るときも早い。
そのうえ、勝ちと負けが半分ずつくらいだと、複利の場合はじわじわ減ってしまうことがあります。


だからこそ、複利を見るときには増える力だけでなく、その裏側にある影にも目を向ける必要があります。



まとめ

•複利は「勝ち続ける」なら最強
•でも「勝ったり負けたり」する現実では、複利は不利になることも
•セールストークの「複利は絶大!」だけを信じるのは危険
•複利の“光と影”を理解してこそ、賢い投資判断ができる




最後に、FPとして日々感じていることを少しだけ。


投資信託の世界では、「複利効果で長期的に大きく増える」とよく語られます。
しかし私は、投資信託の基準価額そのものに“複利で増える仕組み”が組み込まれているわけではないと考えています。
結局のところ、投資信託のリターンは買ったときの基準価額×口数と、売るときの基準価額×口数この2つで決まります。


一方で、経済は長期的に複利のような曲線を描きます。
だからインデックスの投資信託を長く保有するとマイナスになりにくいのも事実です。


ただし── セールス資料に載っているような、“きれいな右肩上がりの複利グラフ”は現実とは違います。
実際のTOPIXやS&P500のチャートを見れば、 上がったり下がったり、時には大きく落ち込んだりしながら 長い時間をかけて成長していることが分かります。
だからこそ、 与えられた情報をそのまま信じてしまうのは危険
複利効果でずっと上がり続けると思い込んでいると、下がった時の心的ダメージも大きくなり、最終的には自ら損をする道を選んでしまうこともしばしばあります。


複利の光と影、両方を理解しておくことが、 自分の資産を守るために欠かせないと感じています。